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清水紫琴「一青年異様の述懐」 3

それでは、この一個の肉塊としての僕が、今や何を考え、また一意専心に何を企てつつあるかを自白しよう。

僕の友人は、僕がまだ恋をしていると気づく前から、早くも彼女に気があるものと察して、僕のために揃って彼女の経歴を説明し、目下の境遇を語り、彼女はとうてい誰とも結婚するはずがない人だと言った。

彼女が結婚をする人であるかどうかは、もとより僕が彼女を恋するのに差支えのないことなので、僕はこのために別に失意もしない。

けれども、その結婚をしないといった原因は、彼女がかつて廉潔でない男子にその性情を損なわれ、それから男子一般について、まったく絶望したためであるといったことを聞き、僕はいっそうこの一身を彼女のために捧げようと決意したのである。

けれども、これまで恋には経験がないので、どうすれば彼女が身辺にまとっている漠然とした愁いの雲を払うことができるのか。

また、どうすれば彼女の胸を塞いでいる憂いを開く鍵となれるだろうか。

これらのことについて、僕は実に、小さな子どもが宇宙の大問題に関して問いを発せられたよりも、なおかつ困難に思うのである。

まず試しに、彼女に対して、あらゆる力を尽くす親友にしてほしいと言い送ろうか。

いや、彼女は容易に男子を信用しないだろうから、僕がまだ彼女に知られる前から、このようなことを言い送ったとすれば、かえって彼女の憂いを増やす種となるかもしれない。

それならば、僕はむしろ自分の親友の中で最も性情が優しい人を選び、そして彼女を慰める友人とさせようか。

いや、これも頼りない。

たとえその性質がどのように優しくても、彼女を熱愛しない者では、とうてい彼女の心を和らげることはできないだろう。

ああ、僕は彼女に高潔な愛情を持つ点では、おそらく僕に及ぶ者はないだろうと自分でも信じるが、ただ僕が元来武骨者で、その方法を知らないことに苦しむのである。

僕の数日来の懊悩や煩悶は、つまり、このことにほかならない。

なお一言すれば、僕は彼女を失望の中から救って、多望で円満な人とさせなければ、とうてい安心することができないのである。

この点から思えば、僕はむしろ、僕の恋愛が彼女に対して成就するかどうかを問わない。

誰であろうと、僕よりも数段優れた人が出てきて、僕のように彼女を愛してくれ、そして彼女を恋愛を感じる幸福な人とさせることができるなら、僕は自分というこの肉塊が、彼女の前で無益な供え物となって、いたずらに滅び去ることがあっても、少しも遺憾とは思わないのである。

むしろ、彼女のために、これを願うことが至当であるのを信じるのである。

(おわり)

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