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清水紫琴「一青年異様の述懐」 2

僕が最初に彼女と友人宅で出会ったときは、わずかに一、二語を交わしただけだ。

別段、親密に談話をしたというのではなかったが、彼女の非凡な資質はどことなく顕れ、僕はまずこれに対して尊敬の念が起こった。

そして、平素いろいろな関係から、女性を土芥視し、もしくは悪魔視していた僕は、彼女の前でたいそう小さい者となったような心地がし、処女のように謹んでうずくまっていた。

このときから、僕は実に一般女性に対する考えもまた大いに変わり、それまでの僕の考えは大いに間違ったものであったことを悟ったが、それにしても、彼女の資質は少し異様なように思われ、いっそう深くこれを探究したいという思いが起こった。

このようなわけで、用事に託して友人に頼み、なお一、二回彼女に接見した。

その間、一言を交え、一語を加えるに及んで、最初の探究の念はもちろん、僕の本質さえ、まったくどこかへ消え失せて、かえって僕のすべての心を彼女の前に捧げるものとなったのである。

ほかに何の事情も、何の関係もありはしない。

思うに、これが世にいう恋なのか。

ああ恋だ、ああ恋だ、恋に違いない。

僕は確かに恋をしたのである。

なんと不思議。

偏屈な僕のような者も、ついに恋をする時機に遭遇したのか。

なんと恋だ。

恋だとしても、彼女は実に不可思議な力を有するのである。

ならば、その恋の原因はどのあたりにあったか。

美しい彼女の眉か。

涼しげな彼女の目か。

でなければ、しとやかで優雅な挙止か。

朗らかな声か。

あるいはまた豊かな文才か。

これらのものは、もとより一瞥の価値がなくはない。

けれども、僕は彼女以外の人にもまた、これらのものを見ていた。

それでも、僕は少しも心を動かすことはなかった。

ただ、彼女について異様に感じたものは、彼女が体から放っている霊光であった。

彼女が、人を清くし、人を優しくする。

何とも名づけがたいように感じたときは、すでに僕が恋の人となる始めであった。

今や僕の意識、僕の感情は、ことごとく彼女のことについてだけ働く。

僕はそのほかには、何もわからない。

いま、もし人がいて、白刃を僕の頭の上に加えても、僕はこれを避けることにも気づかないだろうと思う。

ああ、僕は憐れな人となったものだ。

いや、僕という人間はとうに滅んで、今はただ恋愛の分子から成り立っている一個の肉塊が、彼女のために生きて動いているだけだ。

ああ、なんということだ。

(つづく)

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