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2008年1月18日 (金)

「私の人生ゲーム」

通勤中、車の中でFMラジオを聞いてますが、昔からある「人生ゲーム」にオーダーメイド版が登場、その第一弾は「私の人生ゲーム for Bridal」・・・というニュースを聞いて、ちょっと笑ってしまいました。

ネットで検索したら、4月上旬から専用サイトで申込受付を開始。全99コマ中56マスに、結婚する2人のエピソードを入力し、写真をアップロードすると、20日ほどで印刷データの確認があり、確認後15日ほどで届くのだとか(税込36,750円)。

サンプルを見て、ますます笑ってしまいましたが、将来、「お父さんって、通知票に落ち着きがないって書かれたんだ!」とか「お母さんだって、15歳で茶髪だったんでしょ?」というネタになるのか、よんどころない事情でゴミになるのかは、盤上のルーレットではなく、その後の人生次第。

そっちのほうがゲームだなあ・・・と私なんかは思いますが、記念品としてはウケる企画かも。今後は、自分史や家族史、社史をテーマにしたものの販売も検討するそう。

私が自分史のゲーム盤を作るとしたら、「○歳、就職の面接で初めて○○に行き、道路脇に高く積まれた雪を見て帰りたくなる」は必須。あのとき回れ右して帰ってたら、今頃どうしてるかなあ・・・と、ときどき思うので^_^;

2007年9月 4日 (火)

月のマークの

「夜洗いでも、いいじゃない。」というキャッチコピーで、最近CMが流れてる衣料用洗剤のサイトを見てみました。

 花王 スタイルフィット 夜洗い.com(2007/08/27公開)

「スペシャルサイト」に行くと、オープニングのフラッシュが終わった後に、CMのコピーと合致したサイト・コンセプトが書かれてます。

このサイトでは、仕事や趣味に忙しいみなさんに、夜にお洗濯をするという新しいライフスタイル=“夜洗い”を提案しています。

でも、フラッシュ中に「働く女性の約40%が夜洗いをしています。」というコピーがあったり、「実はみんな夜洗い!」のページがあったり。もうみんなやってるなら、「新しいライフスタイル=“夜洗い”を提案」・・・でもないような。

実は、私も今のマンションに越してから、“夜洗い”中心。その理由は・・・。

  • 干す場所が東向きベランダなので、夜~翌日が晴れの場合、夜から干しておくと起きた頃には乾いている。曇りの場合は、そうしないと乾かない。
  • 夜11:00~朝7:00の電気料金が昼間の1/3になる契約なので、雨や雪の場合は、その時間帯に浴室の換気乾燥暖房システムを「衣類乾燥」モードにして干す。

下線部分が前のマンションとは違うところ。なので、起きてからしか洗えないベッド周りのカバー類、先日のスーパーでの出来事のような緊急時を除いて、ほとんどが“夜洗い”。「新しいライフスタイル」というより、朝寝坊と干す場所、電気代のためですね(^_^;)

ところで、この新製品。洗剤自体に”夜洗い”に適した特別な点があるのかと思ったら、「スタイルフィットのここがイイ!」や「製品情報」のページを見ても、特に変わった点はないみたい。

なら、どうして“夜洗い”をコンセプトに?・・・と思いましたが、“夜洗い”派には部屋干しが多いとあり、「部屋干ししても、いい香り」と歌ってるので、ライバルはライオンの「部屋干しトップ」なのでしょう。

「“洗濯回数が多い家庭”や“雨”のイメージが強いあちらに対して、もっとオシャレに、“働く女性”と“夜”を打ち出しましょう」
「“雨”は毎日降りませんが、“夜”は毎日。“働く女性”といっても、仲良く“夜洗い”する夫婦を出して。夜空には“月”。まさに御社にぴったりですよ!」

・・・と広告代理店が提案したとか?

たしかにCMには目が行くものの、“夜洗い”と製品名の間に「部屋干しトップ」のようなストレートさがないし、認知されるまで売り場でビデオを流すとか、ボトルにシールを貼るとか(貼ってるのかな?)しないと、肝心の“夜洗い”はどっか行っちゃう感じ。

パッケージデザインも、さすがに暗色は使えないし、“夜”のイメージは希薄。液体洗剤と柔軟剤の丸みを帯びたボトルや半円形の取っ手は、他の花王製品にはないので、ここで“月”を意識したのかもしれないけど・・・。

ということで、自称・ときどき新旧の広告ウォッチャーの私としては、「スタイルフィット」の次のCMがどういうコンセプトになるのか、ちょっと楽しみです。

2007年8月15日 (水)

愛国婦人会のチラシ

昨年の今頃、何読んでたかなあ・・・と思ったら、こんな記事を書いてました。

 「終戦記念日」前後の読書(2006年8月17日)

取り上げてたのは、井上ひさし『子どもにつたえる日本国憲法』、佐藤卓己『八月十五日の神話-終戦記念日のメディア学』、宮本百合子『播州平野』というラインナップ。

で、今年の「終戦記念日」は・・・というと、地元新聞社の古本市に出かけて、大原富枝『原 阿佐緒』『今日ある命-小説・歌人三ヶ島葭子の生涯』、小辻幸雄『ある戦後史-中野鈴子とその周辺』と、こんなチラシ(↓クリックで拡大)を買いました。

070815_20440001_2愛国婦人会福井県支部の「選挙に現はせ日本精神」というチラシ(200円)。

発行年月日はありませんが、昭和10年8月の選挙粛清婦人聯合会の結成後かなあ?・・・と推察。

国会図書館のサイト「史料にみる日本の近代」には、愛国婦人会本部の「選挙粛正の為に我が国四千万婦人に愬ふ」というアピール(昭和10年8月)が掲載されてます。

その解説によれば、昭和10年5月公布の選挙粛正委員会令、6月の選挙粛正中央聯盟結成に始まる選挙粛正運動は、「内務省主導の官民合同運動」で、「国民精神総動員運動・翼賛選挙へ繋がる下地」になったとのこと。

選挙粛正婦人聯合会(会長・吉岡弥生、書記・市川房枝)の運動についても、こんな説明がありました。

これは選挙権を持つ男性へ働きかける「内助の力」を期待されたもので、婦人参政権獲得へ結びつくものではなかった。選挙権をはじめとする女性の権利獲得を目指していた女性運動家達も、国策協力への大きな流れに吸収されていったのである。

下線部の傾向は、今日買ったチラシにも・・・。

女の立場から投票する人々に対し、しつかりやつて貰ふやうにし、我が家我が部落より違反者を出さぬやうつとめませう

満州事変の勃発は4年前の9月、日中戦争の勃発は2年後の7月でした。

2007年7月 8日 (日)

戦時下の広告

昨夜、七夕にちなんで、野上弥生子の初期の短編「七夕さま」(1907年)を読もうと思ったら、収録した本が見つからず。青空文庫で検索してから、著作権存続中だったことに気づきました。

諦めてテレビを見ていたら、盧溝橋事件(1937年)から70年というニュースをやってたので、この年の暮から言論統制が強まったんだったと思って、前にも取り上げたことがある『婦人朝日』(1940年10月号)を引っぱり出しました。

その中の広告をネタに書いた「1940年の雑誌広告」(2006年5月17日)には、毎月何度か「ムッソリーニペン」等の検索ワードでアクセスがありますが、時代を感じるコピーが面白くて書いたので、写真は不掲載。

100年前に公表された「七夕さま」は、著作者の死後50年を経過していないので、青空文庫にもアップされてませんが、無名の著作物や団体名義の著作物は、公表後50年で著作権が切れるらしいので、この機会に撮ってみました。

     *     *     *     *     *

070707_23190001_3戦時体制下に輝く純国産!!

 国策順応
 国を挙げて
 ムッソリーニペン

 流線型 書きよく 体裁優美 構造堅牢
 スラスラ書けて 錆びず値の廉い 国産の逸品
 クラウン万年筆
(株式会社澤井商店)

ほとんどが国策順応の広告ですが、前に取り上げなかったもので、商品名が不思議なのは・・・。

070708_07510001シンヨの月美人カレー

 外米も
 混合食も
 戦時体制の今日
 大に歓迎しませう
 その時こそカレーの本領が
 本当に判つて頂ける時です」
(新與からし本舗 合名会社黒川與兵衛商店)

     *     *     *     *     *

67年前の婦人雑誌の広告です。

2006年11月20日 (月)

金港堂お伽噺

『婦人界』(明治35年7月)に掲載されている「金港堂お伽噺」シリーズの広告。

『婦人界』も金港堂書籍株式会社の雑誌なので、自社の出版物の広告ですが、『婦人界』の若いお母さん読者を狙ってか、他の広告が集まらなかったのか、14頁連続の広告です。

絵はなく、著者・題名・定価に簡単な紹介がついた広告で、最初の1冊は、こんな感じ。

神谷鶴伴氏作
天狗の話 全一冊 定価金三銭

天狗といふものはあるものでせうか、無いものでせうか、決して無いとは限りませぬ。ある妻君(おかみさん)が天狗にさらはれたといふ面白いお伽ばなし。

次の『新鬼が島』も、「二番目の桃太郎が別の鬼が島を征伐した面白いお話です」とありますが、ストレートに「面白い」といわれても、どこがどう「面白い」のか、全然わかんないな~と思ったら・・・。

平子鐸嶺氏作
人喰い 全一冊 定価金三銭

名はおそろしい人喰いなれど、まことは妙なまちがひで、おそろしがった坊ちゃん二人。まづまづ命が助かった、と喜ぶはなしは、読まねばわからぬ。

藤園主人作
大がへる 全一冊 定価金三銭

かへるかへる。大蛙、モットモット大きくなれよ、そらまだだ。ヤレまだだ、といはれて大蛙、どうしましたろう。小さい蛙はおどろく、大へん大へん、そのわけ読んだらわかる。

すゞの屋主人作
太郎と烏 全一冊 定価金三銭

からすが、カアカア。『おいらは人間よりかしこいぞ。』 坊チャン『なぜ』 『本をよんだらわかる』

「読まねばわからぬ」、「読んだらわかる」には、笑っちゃいました。

2006年11月18日 (土)

1902年の雑誌広告

最近、カテゴリー「広告のこと」の記事を書いてないので、昔の女性雑誌をパラパラと・・・。

明治35年7月の『婦人界』なので、正真正銘、昔の雑誌。おじいさんの頃しかしらない昭和天皇が満1歳という時代です。

061117_23020001_1表2(表紙裏)は、花王石鹸「二八水」の1頁広告。

右手で瓶を持ち、左手に化粧水をとろうとしてる絵なので、雑誌を逆さまにしたくなるけど、アンティークなデザインの瓶がステキです。 

表2対向は、東京日本橋・大阪高麗橋の三井呉服店。

「御休息室をも取設おき候間おなぐさみかたがた御子様方おつれ遊ばされゆるゆる御遊覧なし下され度願上候」と、ご婦人向け候文のコピー。女性雑誌なので、化粧品、呉服店の広告が並んでるのもうなづけます。

次が目次(見開き)で、口絵、絵葉書(綴じ込み付録)の後に、山崎太陽堂「淋丸」の1/2広告。

061117_23030001_1_1昔の雑誌を見ると、性感染症の売薬の広告が多いけど、ここでは「淋病は子宮病を起す基で又 子の出来ざる原因である故 速に淋病を根治して子宮病を除き健全なる子を設けられよ」とアピール。

夫から感染しても、「子なき女は去るべし」の『女大学』の時代を感じます。

その後、書籍・新聞の広告が続き、再び口絵。

061117_23060001「淋丸」の口髭の男性と似てるな~と思ったら、「西郷侯爵の家庭」の写真。

西郷侯爵って、あの西郷隆盛?・・・なわけないので、「家庭欄を見よ」の指示に従うと、「侯が内務大臣の時」「台湾征討の常時」のエピソードがあるので、弟の西郷従道みたい。当時は有名人なんでしょうけど、下の名前、書いてないので。

広告に口髭の男性が描かれるのは、地位ある男性の象徴、転じて商品の権威づけかと思ったら、こんな口髭もありました。

061117_23080001 山崎愛國堂「毛生液」の広告。

山崎愛國堂といえば、前に取り上げたことがある「ゼム」の広告もおもしろかったです(「暑くなると」を参照)。文学作品にも出てくるので、「石川啄木 ゼム」などの検索で、今もときどきアクセスがありますが、こちらも「禿、抜毛、薄毛、生際悪き人試みよ(略)あるべき所毛なきに用て毛はへる事」 といいながら、絵には、なくていいとこにまで毛が生えてるお茶目っぷり。

ホントは、「金港堂お伽噺」シリーズのコピーがおもしろかったので、そっちをメインにするつもりでしたが、長くなるので改めて・・・。

2006年9月19日 (火)

秘伝のタレ

ネットでニュースを見ていたら、こんな記事を発見。

北陸大:国内の全高校、推薦指定校に 「誰でもいいのか」戸惑う声も
(『毎日新聞』大阪朝刊 2006年9月17日)

◇07年度2学部で 一般入試廃止も検討
金沢市の北陸大(河島進学長)は、07年度入試の指定校推薦で国内のすべての全日制高校を指定校にする。高等専門学校を含む5238校が対象になる。指定校推薦は高校側との信頼関係の上に成り立つ制度で、一般推薦と異なり、高校から推薦されればほぼ合格する。文部科学省は「日本中の高校を指定校にするのは聞いたことがない」としており、高校側からも戸惑う声が出ているが、北陸大は「学生に意欲があり、教育の中身がしっかりしていれば能力はついてくる」とし、志願者増を期待している。

ずいぶん思い切ったことをしていて、タイトルに「誰でもいいのか」とあるのも肯けます。

戦略・戦術に適った思い切ったことは、私も好き(『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーも好き)ですが、この場合はどうなんでしょう?

北陸大は1975年創立の私学。法学部など4学部があり、全学生は約2800人。07年度の入学定員は計506人で、うち、薬学部と未来創造学部で全国の高校を指定校にして計200人を募集する。出願期間は10月10~20日。筆記試験はなく、生徒には面接し、定員以上の応募があった場合は選抜を行う。(略) 06年度の指定校募集枠は両学部で計50人。指定校は▽薬学部67校▽未来創造学部185校で計50人がこの枠で入学した。

北陸大学の公式サイトで確認してみました。

記事には「法学部など4学部」とありますが、法学部と外国語学部は、04年度の未来創造学部開設に伴い、新入生募集はしていないので、在学生が卒業するまでの暫定的な4学部体制。

そして、薬学部は定員306名のうち120名、未来創造学部は定員200名のうち80名をこの指定校推薦で募集。

入学定員に占める指定校推薦の募集枠は、06年度の9.9%から07年度は39.5%まで拡大。

指定校は、06年度の延べ252校から、一気に全国の全日制高校・高等専門学校5,238校に拡大ということのようです。

この入試制度の変更について、学内でどんな議論がされたのか知る由もありませんが、これだけ大きな変更をして責任を負える(または問われない)のは、フツーに考えトップの方だけだと思うので、トップダウンの決定かしら?

指定される側から見ると、他校との差別化がなくてありがたみがないし、「定員以上の応募があった場合は選抜を行う」というのは、公募推薦とどこが違うの? と思いますが、この大学の公募推薦は、他大学との併願可で、調査書の評定平均値の条件もなし。

つまり、「専願で、評定平均値3.0以上の方なら、こちらのほうが枠も広くて、嫌な筆記試験もないし、いいですよー。全国の受験生の皆さん、金沢で大学生になりませんかー?」ということみたい。

河島学長は「学力不足で大学にいけないと思う人たちもいる。機会を均等に多くの人に与えたい。偏差値教育を見直し、入試制度に一石を投じたい」としており、将来は一般入試の廃止も検討しているという。大学の教職員約90人が一部の高校に出向き、単なる学生集めではないことなどを説明しており、実際の出願数については「募集定員前後で落ち着くのでは」と想定している。

たぶん、この出願数の想定は、合格したら入学する意思のある受験生が、公募推薦から指定校推薦に移行するという見込みに立っていて、「一部の高校」に出向いている教職員の方々も、そのへんを説明しているのだと思います。

でも、従来の募集エリアが頭打ちで、本気で全国に枠を広げようと考えているなら、教職員が訪問できる高校の数にも限度があり、少子化は他のエリアも同じなので、これまで以上に魅力的で、遠方の受験生にも通じる広報が必要になるはず。

そう思って、指定校推薦のページをスクロールしていたら、入試概要の下に、こういうコピーがありました。

全国すべての高校が指定校
2007年度から、北陸大学は全国5200校の高等学校すべてを指定校とさせていただきます。そして、学びへの明確な意志を持つ全国の皆さんを受け止め、“北陸大学秘伝のタレ”とも呼ぶべき独自の教育方法で責任と愛情を持って教育します。

実は、いま書いてるのは、この「秘伝のタレ」というコンセプトやコピーが、あまりにもおかしかったから。

「秘伝のタレ」のページを見ると、まず、電車の中吊り広告か何かに使ったと思われる、白地に黒・赤の文字だけの画像。

左側の大きい「秘伝のタレ」という文字の下には、「Secret Sauce」という英字まで添えてあって笑えました。

スクロールすると、タレがたっぷり染み込んだ「うな重」の写真があり、続いて「秘伝のタレ」の3つの要素の説明があるという構成。

だけど、その説明は、1)学生支援の体制、2)授業日数の多さ、3)留学やWeb学習などの教育プログラムをちょっとつまんで、「秘伝のタレ」という語をかぶせただけ。

パッと見のおもしろさはありますが、このページを読む限り、情報の把握と伝え方を失敗してるなーと思いました。

なぜかというと、「秘伝のタレ」は、指定校推薦で入学してほしい受験生に特化したメッセージであるべきなのに、そのポイントとして挙げられているのは、他の入試で入学する学生と共通のものしかありません。

つまり、指定校推薦を全国に拡大することと通常の大学のセールスポイントをくっつけて、「秘伝のタレ」と言っただけ。

これでは、『毎日』の記事のように、「誰でもいいのか」と報じられても仕方ありません。

なぜ全国に拡大するのか、全然わからないもん!

私が制作側の人間なら、学生を「うな重」に喩えた企画は提案しないし、大学側の人間なら、そんな企画は採用したくないけど、この比喩を借りるなら、美味しい「うな重」を作るためには、「秘伝のタレ」だけでなく、お米やうなぎという素材も大切なので、どういう産地でどう育ったかを問わない「お店」というのは、いかがなものかと・・・。

記事によれば、実際、そういう「生産者」の方の声もあるようです。

高校側からは「高校の特色も調べず、一方的に指定するのはおかしい」という声もあり、案内状を受け取った東京都立高の男性教諭は「『高校生なら誰でもいいよ』としか聞こえない。生徒に配布する指定校の一覧表には載せなかった」と冷ややかだ。

お店の姿勢に問題があるなら、いくら「秘伝のタレ」という触れ込みで広告しても、売るのは難しいかもしれません。

この場合、誰に何をどう売りたいかはっきりしていないので、「秘伝のタレ」としかいいようがなかったのかもしれませんが、そこまでシニカルな表現を提案、採用したのなら、それはそれでスゴイ・・・です。

2006年5月23日 (火)

暑くなると

暑くなると食欲減退。熱いものが食べられないので、昨日の昼食は職場の食堂で冷やし中華、夕食は自宅で冷やしうどんとおろし納豆。

その後、ビールを飲みながら、昔の女性雑誌(復刻版)をめくっていたら、こんな広告を見つけました。

THE GEM ゼ
        ム

衛生家必携
懐中良薬


ゼム一粒の 馥郁たる香氣と愛すべき美味とは一度用て終生忘るゝ能はざらしむ故にゼムは廣く萬人に愛用せらる
ゼム二粒は 烟草の味を美にし心神を爽快にし疲勞を減じ息切れを防ぎ渇を醫す故にゼムは外遊學生に愛用せらる
ゼム三粒は 音聲を美くす音聲は美の一要素也故にゼムは紳士佳人に愛用せらる
ゼム五粒を 食前食後に用ふれば食慾を增進し消化を助く故にゼムは衛生を重んずる士の常用劑として愛用せらる
ゼム十粒は 異境に於ける風土病疾癘食當り水傷りを治して神效あり舟車の醉を防ぐ故にゼムは進取的遠征家及び旅行家の必携として愛用せらる

『家庭文芸』明治40年1月号より。原文は縦書き。広告主は東京馬喰町の「愛國堂 山崎榮三郎」。

正月号らしく、ページ全体を羽根(羽子板の)と松葉で囲み、中央には松の樹影と初日の出。そこに商品名をかぶせ、左には与謝野晶子似の眉の太い女性の顔が菱形の枠の中に描かれてます。

なんだかよくわからないけど、暑気あたり、食欲不振に効きそうじゃない? 声も美しくなるっていうし(^。^)y-.。o○ と思って、別の雑誌を見ていたら、

The GEM ゼ
        ム

衛生家必携
懐中良薬

(わらは)の描きましたのは誰の顏でしよう?
 御存じの方はあてゝ御覧遊ばせ
春の女神でしよう
 い……ゝ……え
皆様よくお馴染の癖に!?
ゼム子孃ですよ

『家庭』明治42年4月号より。1ページを上下に分け、上段には、羽ペンを持った洋装・洋髪の女性(妾)が、ロゴと女性(ゼム子嬢)を描いたボードを持っているイラスト。下段には、上記のコピーと「孃の持てるゼム」の主効、定価など。

ここでは、「一粒含めば元気爽快 二粒忽ち消化を能くし 三粒にして悪疫を防ぐ」と、2年前の広告より商品説明が簡略化されてます。

どちらも日露戦争後の広告で、『家庭文芸』は文芸雑誌、『家庭』は日本女子大学通信教育会の機関誌。

前者では、海外進出・侵攻のおともに・・・とも勧めてましたが、後者は、女子大の講義録をお読みになるお嬢様・奥様方がターゲットなので、それらしくコピーを変更。「あてゝ御覧遊ばせ」「い……ゝ……え」「よくお馴染の癖に!?」、使ってみたい言葉です(^_^;)

このゼム、新聞広告もさかんに打っていたらしく、東京大学総合研究博物館画像アーカイブスでも、明治35年7月13日付『北海タイムス』(右下)、明治44年6月14日付『大阪毎日新聞』(上)に掲載された広告を見ることができます。

Yahoo!オークションで出品・落札された明治41年の『国民新聞』付録「大日本新地図」(樺太・台湾も含む)にも、右下にちゃっかり掲載。

国花・桜を背景に、「春の女神」のような女性が、左手に「ゼム子孃」の絵を持ち、右手からは白い錠剤をはらはらとこぼしています。

日本と「ゼム」

美なる哉日本島帝国、優なる哉懐中薬「ゼム」。我邦は無数の島嶼に成り、「ゼム」は無数の効果を含む、日本の名聲世界に高く「ゼム」の需用中外に高し、

主効の欄には、「常用すれば記憶力を増し」と新たな効能が加わっていますが、ここでも「大日本帝国」の地図にあわせてコピーを展開。

関勉さんのホームページによれば、明治43年5月20日付『東京朝日新聞』に「ハレー彗星衝突の恐怖から逃れたいなら霊薬ゼムを飲め」という広告があったそうですし、まさに何でもありのゼム。

と来れば、文学作品にも登場します。

やみがたき用を忘れ来(き)ぬ―
途中にて口に入れたる
ゼムのためなりし。

石川啄木の第2歌集『悲しき玩具』(明治45年)より。「新しき明日の来(きた)るを信ずといふ/自分の言葉に/嘘はなけれど―」が有名ですが、この歌では、ゼムを口に入れたら、大事な用があったのに忘れてしまったと詠んでいます。「記憶力を増し」は嘘でしたか(>_<)

胃弱だった夏目漱石は、明治42年秋に旧友の満鉄総裁・中村是公(ぜこう)と満韓旅行をした際にゼムを携帯。途中でなくなったらしく、大連の薬屋でも購入しています。

例の連れて行ってやると云う厚意に免じて、腹の痛いのを我慢して目的の家まで行ってすぐ椅子の上へ腰をかけてしまった。(略)余はポッケットからゼムを出して呑んだ。(九)

是公は書斎の大きな椅子の上に胡坐をかいて、河豚の干物を噛って酒を呑んでいる。(略)そうこうする内に、おいゼムを持っているなら少しくれ、何だかおれも胃が悪くなったようだと手を出した。(略)これは二三日前是公といっしょに馬車に乗って、市中を乗り廻した時、是公の御者から二十銭借りて大連の薬屋で買ったものである。(十八)

いよいよ腹が痛んだ。ゼムを噛んだり、宝丹を呑んだり、通じ薬をやったり、内地から持って来た散薬を用いたりする。(三十一)

余はこのトロに運搬されたため、悪い胃を著るしく悪くした。車の上では始終ゼムを含んで早く目的地に着けば好いと思っていた。(三十二)

「満韓ところどころ」(『朝日新聞』明治42年10月21日~12月30日)より。でも、ちっとも効いてないみたい。

あの漱石に何度も取り上げられて、愛國堂の山崎榮三郎さん、嬉しかったやらハラハラしたやら・・・。ターゲットに何らかの希望や欲望を持たせて、購買・集客を図るのが広告だとは思いますが、誇大広告はいけませんよね?

2006年5月17日 (水)

1940年の雑誌広告

たまに必要があって昔の雑誌を読みますが、表紙、口絵、目次、記事などとともに、いたく「時代」を感じさせてくれるのが広告。

いま手元にある、朝日新聞社発行の『婦人朝日』1940年10月号(定価40銭。日本の古本屋で探し、4,000円で購入)も、そんな1冊です。たとえば・・・。

「アイデアル洋髪香油」(高橋東洋堂)のキャッチコピー。

硫黄と燐の複合リパイド配合
自粛の洋髪に本香油を!

「自粛の洋髪」と言いながら、商品は売らねばなりません。漢字で大きく「硫黄と燐」。しかも、よくわからない「複合リパイド」。きな臭さ満点、一触即発といった雰囲気のパーマヘア用オイル。定価55銭。

「花王シャンプー」(花王石鹸株式会社長瀬商会)。

戦争と髪
フランスは敗れた・人工の美は弱かつた

新体制が要求するまことの女性美は清潔にして健康な自然の美しさです

同盟国ドイツによるフランス占領のことをいってます。敗れたフランス製でなく、日本製(当社)のシャンプーをお使いなさいという内容。「新体制」は、挙国一致の戦時体制確立に向け、この年から各方面で行われた統制の総称。「人工」/「自然」の恣意的な使い方にも注目。時局迎合のお手本みたいな広告です。写真は笑顔の女学生3人。

「パピリオ」(パピリオ化粧品)。

パピリオの
若き科学者たちの組織する、わが研究所はすでに百九十万円を研究に使つてゐる。ずつと、舶来ばかりお使ひになつてた方、比べて下さい。

ボディコピーでは、「粉白粉を顕微鏡でごらんになつたことありませんか?(略) フランス○○○ 商業道徳上、名は申せませんが、誰でも知つてるあれは」と、女性4人の顔写真と肌の拡大写真入りで比較広告。こんなところで比較されるなんて、コティもびっくり(しないって)!

「モノゲン」(ゲンブマルセール石鹸本舗/第一工業製薬株式会社)。

化学の力でもまずに汚れがよく落ちる
上手に洗つて永持ちさせて
被服資源を護りませう

「銃後の護り」は洗濯にも。「スフ・毛類・人絹のおせんたくに」。定価50銭~1円20銭。モノゲンは、昔も今も縮みやすい衣類によいようです。

そして、「ムッソリーニペン」(クラウン万年筆/株式会社澤井商店)。

戦時体制に輝く純国産!!
国策順応
国を挙げて
ムッソリーニペン

「ムッソリーニペン」と彫られたペン先と万年筆の広告。「スラスラ書けて錆びず値の廉い国産の逸品」だそうです。なのに、商品名には、他国(同盟国とはいえ)の首相の名前を拝借。ムッソリーニは、3年後の7月に罷免、イタリア軍に拘束されました。この商品、いつまであったのかな?

「ヨゥモトニック」(三共株式会社/泰昌製薬株式会社)。

精神(こころ)に明朗
粉飾(みだしなみ)には自戒を

この一瓶が、「頭髪の健康」を一手に引受ける……正しい養毛料
ヨゥモトニック

ボディコピーで、「①雲脂が止まる ②頭臭を消す ③痒味を去る ④脱毛を制へる ⑤毛生力を促がし若禿を予防する」と5つの効果がうたわれています。定価の記載なし。ヨゥモ(養毛)+トニックでヨゥモトニックかと思ったのですが、姉妹品に「ヨゥモト香油」(60銭)、「ヨゥモト洗髪液」(60銭)というのもあって・・・違うのかな?

ちなみに、三共株式会社は、今年4月に第一製薬株式会社とヘルスケア事業を統合し、第一三共ヘルスケア株式会社に。最近まであったらしいヨゥモトニック、検索してみたけど、見つかりませんでした。知人に教えたかったのに・・・残念。

「オリエンタルフィルム」(オリエンタル写真工業株式会社)。

女性の立場
慰問写真にパンXフイルム

記事横下5㎝×10㎝の広告ですが、ボディコピーには「敢へて作家になれとは申しません(略) 女が哲学を論じたり、政治に容喙したりすることだけが、決して女の知性を高めることではないのです。カメラを通して社会を知り、フイルムを通して人生を穿つ、そんなところに女性カメラマンとしての立場があるのじやないでせうか」という文章を採用。

「慰問写真に」とあることから、夫や兄弟などが徴兵された後、女性にもフィルムの需要を伸ばすための広告と思われますが、書いてあることはご立派。「容喙(ようかい)」といった難しい漢字にもルビはなく、ターゲットは知識人女性。

「リポイド・クリーム」(三共株式会社/泰昌製薬株式会社)。

中年女性は怠(おこた)らず
皮膚
(ひふ)に栄養(ゑいよう)をやりませう

栄養クリームは一般の化粧用クリームとはつきり区別して使ひ分けて頂きませう
四十ソコソコで小皺やタルミに気を病むナゾとは余りにも近代美容化学の恩恵を御存じないウカツなお話です

「使ひ分けて頂きませう」、「ウカツなお話です」なんて、女学校のコワい先生の訓話みたい。定価3円。ただし、使用後の容器は「立派なインクスタンドに応用」でき、「奥様がメキメキと若返つた後で、其儘、御主人のデスクを飾ると言う寸法」で、2瓶で「スタンド台引換券付の特典」あり。時局柄、ただの贅沢品ではございませんわよ!と主張したいようです。

「樋屋竒應丸」(本家 樋屋合資会社)。

日本(ニッポン)の力(ちから)……は赤チヤンの健康から
愛児(あいぢ)の順調(じゆんちよう)な発育(はついく)を保證(ほせう)する
正しい救急 治病 保健の良薬(キオーガン)から

記事横1/2広告。出生率の低下を国力の低下と考える方々には、今も赤ちゃんは「日本の力」かもしれません・・・。主効は「カンムシ、胃腸障害、吐乳青便、かぜ発熱、ヒキツケ、キゼツ、智恵熱、胎毒、夜泣」。薬価20銭より。・・・と書いて思い出すのは、4月の異動前、私が熱を出して欠勤すると、部長から「智恵熱やな」と言われていたことですが、意味わかりませんでした。

きりがないので、今回はこのへんで。また、続きを書くかもしれません・・・。

まちこの現代語訳

まちこの文学散歩

  • 芭蕉句碑
    文学碑、墓所、記念館、作中の舞台など、文学散歩のアルバムです。

まちこの小庭

  • シナモンバジル
    バラとハーブが中心のベランダ・ガーデニングのアルバムです。

クロエとクレアのドライフード

  • ニュートロ ワイルドレシピ アダルト チキン
  • ニュートロ ワイルドレシピ アダルト サーモン 
  • ニュートロ ワイルドレシピ アダルト 白身魚

クロエとクレアのウェットフード

  • ニュートロ デイリーディッシュ
  • 無一物 まぐろ
  • 無一物 かつお
  • ロイヤルカナン インスティンクティブ グレービー
  • シシア キャット ツナ&チキン&ライス
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  • 何も入れないささみだけのたまの伝説
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  • 何も入れないかつおだけのたまの伝説
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  • 何も入れないまぐろだけのたまの伝説
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  • アボ・ダーム キャット セレクトカット ツナ&チキン缶
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クロエとクレアの薬

  • 整腸剤 犬猫用 ビオイムバスター錠

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