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2018年3月 5日 (月)

講演会「文章を書くということ」

昨日、福井県立図書館で作家・大岡玲さんの講演会「文章を書くということ」を聴講しました。

ふくい風花随筆文学賞授賞式の記念講演会ということで、タイトルだけではどんな内容か想像がつかなかったけれど、昨年4月に逝去された大岡信先生の息子さんのお話ということで。

学生の頃、私は別のゼミでしたが、そのゼミの先輩たちと大岡先生のゼミにも参加し、ご自宅に招かれたことも、近くの深大寺に行ったことも、おそばをごちそうになったこともありました。

講演は、朝日新聞に長年「折々のうた」を連載していた詩人・評論家の父親のこと、編集者がつねに出入りし、本が多くある環境で育ち、小学校の夏休みの課題では“文章を書いてごまかそう”と、「銀河鉄道の夜」をパクった物語を書いて提出したこと、デビュー作「緑なす眠りの丘で」は編集者にダメ出しされなから3年半かけて直したことなどに始まり、日本語で文章を書くということが“ままならない”のはなぜか、という本題に。

昭和20年の敗戦後、“小説の神様”志賀直哉がフランス語の国語化を提唱から、明治5年に森有礼が英語の国語化を提唱したことにさかのぼり、さらにずっとさかのぼって、文字のなかった日本が「外国語」であった漢字・漢文を公式言語(上位言語)として導入して以来の歴史をたどり直し・・・。

幕末には、列強の脅威に対して日本が中国のようにならないよう、中国の影響から脱すること(漢字を廃すること)が前島密によって提唱されるいっぽう、漢文訓読の歴史が日本語とは文法体系の異なる英語の和訳にも役立ち、日本語になかった語彙がどんどん訳されるなか、漢字はかえって欠くことができないものに・・・。

それまで公式言語とされてきた漢文訓読体は、言文一致体の登場と確立(文学では明治20~30年代。法律では、現憲法以降)で首座を譲ったものの、現在はふたたび英語を公式言語(上位言語)としようとする流れがあり、英語を漢語に訳す手続きを簡略化し、外来語がどんどん増えている・・・。

外来語をそのまま取り入れ、意味がわからなくてもよいとする流れは、語彙の減少につながらないか? 英語も世界共通語となるなかで簡単になりつつある。けれども、漢字と葛藤するなかで成熟してきた日本語は、難しくてもよいのではないか?

・・・といったお話でした。

ほかに、ネットで気軽に自分の文章を発表できる時代となり、パターンの修得は上手でも内容は軽い小説の書き手が増えているのは、自分で考え抜き、工夫して文章を生まなくなったから、またかつての編集者のように厳しく批評してくれる人もいなくなったからではないか、という指摘も。

講演会のあと、併設の福井ふるさと文学館で冬季企画展「明治維新150年 近代文学の夜明け」も見学しました。

眺めるだけで美しい装丁の本、一葉「にごりえ」「たけくらべ」の自筆草稿、漱石「道草」の自筆原稿、「三四郎」の校正原稿などは撮影禁止でしたが、撮影可だったのはこの方々の等身大パネル。

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間に入って撮影可能とのことでしたが、やっぱり遠慮しておきましたcoldsweats01

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コメント

母国語は大事ですね。それで考えるのですから。
水村美苗『日本語が亡びるとき』(ちくま文庫)が、同じような問題を扱っていて、
とてもおもしろかったのを思い出しました。

こんにちは。
行間から、文化的な雰囲気がただよってきて、
すてきな時間だったのだろうなと思いました。
韓国ではハングルしか読めない人が多くなり、
昔の本に書かれている様々な事実や研究を
多くの人は知ることができないのだそうです。
日本人はひらがな、かたかな、漢字と
たくさんのことを覚えなければなりませんが、
色々なことを考えることができて、よかったと思います。

>こはるさん

私も『日本語が亡びるとき』を思い出しました。
この記念講演会は年1回あり、一昨年は阿刀田高さんの講演でしたが、そのときにも。

他に、大岡先生のゼミで子規「病牀六尺」がテキストにされたときがあったことも思い出しました。
帰宅して、当時買った『子規三大随筆』(講談社学術文庫)の「病牀六尺」をぱらぱらとめくったら、
「余は今迄禅宗の所謂悟りといふ事を誤解して居た。悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思つて居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であつた。」
という部分に、何を思ってか、線が引いてありました。

>ふうちゃん組さん

日本語は音の数が少なく、同音・同訓の漢字が多いので、漢字廃止やローマ字化して文脈から推し量れと言われても困ってしまうし、使用されない漢字はどんどん理解されなくなっていくでしょうね。

―我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか―
というのは、日本人、そして日本語についても。

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