見えなくても

昨夜、皮下輸液をしたあと、リビングの隣室（パセリが見えるように、間の引き戸は開けてある）でPCに向かっていたとき、パセリがソファから下りてきたので、私の様子を見にくるの？　と思ったら・・・。

一歩一歩確かめるような歩き方で、壁際の本棚の端に接触し、クローゼットの扉に接触し、

「パーちゃん、見えてないの？」

思わず声を出したら、それに驚いて目の前のクローゼットの扉に頭をぶつけ、事態を悟りました。

慢性腎不全に付随した症状として、腎性高血圧による眼底出血や網膜剥離があるというけれど、すでに病院は診療終了。

元通りではないにせよ、降圧剤で見えるようになる例もある･･･と読んだことを思い出し、いつも夜与えている薬（ACE阻害剤）をすぐにフードに混ぜて出しました。

フードのお皿は、においで場所を確認。

水のお皿はわかりづらいようなので、傍で注ぐ音を聞かせて。

昨夜のパセリは、家中を確かめるように、リビングから隣室に行っては壁や扉に鼻をぶつけ、寝室に行っては入口の傍のコート掛けに足をとられ、洗面所のトイレに往復するにも途中で何度も接触しながら。

パセリに近づき、触れるときは、驚かさないように先に声がけ。

別の部屋にいるときは、パセリが目を覚まして「ニャー」と言うたび、「こっちにいるよー」とやはり声がけ。

見えなくなる前にあった物の場所は、動かすと逆にとまどうと思って、そのまま。

寝室のコート掛けだけは、足を引っかけそうなので奥に場所を移し、昨日接触していた玄関の作り付け収納の角には、当たって目を傷つけないよう窓用の「すきまテープ」を貼りました。

こう書くと落ち着いているようですが、昨夜は私も動転し、

「明日朝一番に、病院に電話してみるからね」

朝、陽射しの下では瞳孔収縮がある（夜間は真ん丸だった瞳孔が少し縦長になる）ことを確認したあと、日曜だったと気づきました。

その後、昨夜よりはややスムーズに洗面所のトイレに行って戻るパセリに、もう一度、

「明日朝一番に、病院に電話してみるからね」

パセリの瞳に、私やこの部屋、窓の外の風景はもう映らないかも・・・と思うと、つらさがぐっとこみ上げてきますが、昨夜からの様子を見ていると、家の中を確かめ、量は少ないけれどいつもどおりに食べ、水を飲み、トイレにも自分で行き、見えなくても生きられるかぎり生きるよ・・・と言っているよう。

パセリが受け入れることは、私も受け入れていかなければ・・・と、今はソファで寝ているパセリを見ながら、思っています。