『乳癌診療ガイドライン 5』
この本は医療提供者向けで、29のCQ(Clinical Question)ごとに根拠となる文献を絞り込み、その要旨を収録したCD-ROMが付いて、値段は3,360円(本体3,200円+税)。
一般患者の私から見て「なるほど」と思ったのはCQ20までで、値段のわりに得られたことは少なかったのですが、興味をお持ちの方もいらっしゃるかと思うので、CQ1~10の見出し部分を紹介してみます。
1 アルコール飲料の摂取は乳癌のリスクを増加させるか
Probable(ほぼ確実)
アルコール飲料の摂取により、乳癌のリスクが増加することはほぼ確実である。
「ほぼ確実」とは、「発癌リスクに関連することが、ほぼ確実であると判断できる十分な根拠があり、予防行動を取ることが一般的に勧められる」もの。
ちなみに、2005年版には「アルコール飲料は1日平均2杯以上摂取すると量-反応関係的に危険因子としての影響が生じる」とありましたが、2008年版では「飲酒量に関する閾値(2杯以上で危険増など)は設けないこととした」となっています。
私は退院時(2008年版が出る前)に主治医から「肥満はしてないから大丈夫そうだけど、アルコールの飲みすぎは、何杯とはいえないけどダメ」と聞き、かなり減らしました
2 喫煙は乳癌のリスクを増加させるか
Limited-suggestive(可能性あり)
喫煙により乳癌リスクが増加する可能性がある。
「可能性あり」とは、「『確実』、『ほぼ確実』とは判断できないが、発癌リスクとの関連性を示唆する根拠がある」もの。
これも主治医から「(2005年版に)危険因子と決定できない(喫煙しないことが勧められる強い根拠はない)とあるけどね・・・」と聞いてましたが、やっぱり変更されました。
3 脂肪の食餌摂取は乳癌のリスクを増加させるか
Limited-no conclusion(証拠不十分)
閉経前女性では総脂肪摂取の増加が乳癌のリスクを増加させるかどうかは結論付けられない。
Limited-suggestive(可能性あり)
閉経後女性では総脂肪摂取の増加が乳癌のリスクを増加させる可能性がある。
「証拠不十分」とは、「データが不十分であり、発癌リスクとの関連性について結論付けることができない」もの。
2005年版では、閉経前後の区別はなく、「脂肪の食事摂取は乳癌の危険因子とならない」となっていました。脂肪摂取の増加はCQ4の肥満にもつながるし、閉経後の方は摂りすぎに注意したほうがよさそうです
4 肥満は乳癌のリスクと関連するか
Probable(ほぼ確実)
閉経前女性では肥満が乳癌のリスクを減少させることはほぼ確実である。
Convincing(確実)
閉経後女性では肥満が乳癌のリスクを増加させることは確実である。
「確実」とは、「発癌リスクに関連することが、確実であると判断できる十分な根拠があり、予防行動を取ることが勧められる」もの。
これも、2005年版では「中心性肥満が乳癌の危険因子になるか否かの結論は不明である」となっていました。今は大丈夫ですが、将来的に気をつけたいと思います。
5 緑茶の摂取は乳癌のリスクを減少させるか
Limited-no conclusion(証拠不十分)
緑茶の摂取が乳癌のリスクを減少させるかどうかは結論付けられない。
以下、CQ10までは2008年版からの新項目。
緑茶を習慣的に飲用するアジア地域で乳癌の発病率が低いことが知られ、カテキンに乳癌細胞の増殖を抑制する効果があることを示した報告もあるとのことですが、研究結果にばらつきが多く、結論付けられないそうです
6 大豆、イソフラボンの摂取は乳癌のリスクを減少させるか
Limited-no conclusion(証拠不十分)
大豆食品、イソフラボンの摂取が乳癌のリスクを減少させるかどうかは結論付けられない。
日本人の乳癌発病率は欧米人に比べて低く、イソフラボンに抗エストロゲン作用があることから、大豆食品の摂取が乳癌の発病を減らす可能性が示唆されていますが、一定の結論は得られていないとのこと。
いっぽう、イソフラボンにはエストロゲン作用もあるため、逆に乳癌発病リスクが増加する可能性も危惧されていますが、現時点では、食事で得られる程度のイソフラボンでのリスク増加は確認されていないそう。
私の乳がんはER(+、90%)でした。腎性高血圧があるので、みそ汁は摂っても1日1杯ですが、豆腐や納豆や豆乳は普通に摂るので、ちょっと安心しました。
7 乳癌のリスクを減少させるためにサプリメントを服用することは勧められるか
推奨グレードD
乳癌のリスクを減少させる目的で、サプリメントを服用することは勧められない。
「推奨グレードD」とは、「患者に害悪・不利益が及ぶ可能性があるというエビデンスがあるので、日常診療では実践しないよう推奨する」もの。
CQ6にあるように、大豆食品摂取については乳癌のリスクを低下させるという報告もみられますが、イソフラボンのサプリメントを乳癌予防の目的で大量に摂取することは推奨できないとのことです。
8 初経年齢、閉経年齢は乳癌のリスクと関連するか
Probable(ほぼ確実)
早い初経年齢が乳癌のリスクを増加させることはほぼ確実である。
Limited-suggestive(可能性あり)
遅い閉経年齢は乳癌のリスクを増加させる可能性がある。
よくいわれることですが、自分の意思ではどうにも・・・
9 出産は乳癌のリスクと関連するか
Convincing(確実)
出産経験のない女性は出産経験のある女性と比較して乳癌のリスクが高いことが確実である。
Convincing(確実)
初産年齢が低いほど乳癌のリスクは低く、初産年齢が高い女性は乳癌のリスクが高いことは確実である。
よくいわれることですが、予防目的で早めに出産する人はいないかと・・・。
10 授乳は乳癌のリスクと関連するか
Convincing(確実)
授乳経験のない女性は授乳経験のある女性と比較して乳癌のリスクが増加することは確実である。
Convincing(確実)
授乳期間が長くなるほど乳癌のリスクが低下することは確実である。
これもよくいわれることですが、予防目的で長く授乳する人はいないよね・・・。
といったことが掲載されています
なお、2005年版(初版)はこちらのサイトに掲載されていますが、RQ(Research Question)の数は14で、2008年版(改訂版)のCQの数の半分以下。また、内容的にも上記のように変更された点があるので、その点では買ってよかった・・・かもしれません。
コメント
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発ガン物質とか原因とか、いろいろあるんですね。
変更点があるということは 日々研究されているという事ですね。
しかし、飲酒も原因なんて つらいだろうな
まちこさんは酒豪だったのですか?
梅酒ならいいのかなあ
お酒は古代からあるのでしょうか
源氏の君 と同じお猪口をかわしてみたかったです。
投稿: T恵 | 2009年3月21日 (土) 13:36
アルコール飲料の摂取が乳がんのリスクを増加させるか・・・については、
・厚労省研究班の2007年8月の報告では「データ不十分」
・World Cancer Research Fundの同年11月の報告では「確実」
で、後者の結論を主に考慮して「ほぼ確実」と判断されています。
私はお酒の席ではまあよく飲んだほうですし、自宅でもよく飲んでた時期がありましたが、今は飲んでもビール1缶とかワインや梅酒1杯くらいです、ほんとに。
お酒は人類の長~い友で、源氏物語にも出てきますね
でも、飲みすぎは乳がんに限らずよくありませんから、T恵さんもどうぞお気をつけくださいませ。
投稿: まちこ | 2009年3月21日 (土) 19:47