カメのあゆみ
平山 廉『カメのきた道』(NHKブックス、2007年10月)
サブタイトルは、「甲羅に秘められた2億年の生命進化」。図書館で借りるとき、「いつもと違いますねー」と言われたので、「私、恐竜とか好きだし・・・」と言い訳したのは、カメの化石の本だから。
ちなみに、表紙カバーの折り返しには、次のコピー(amazonの「出版社からのコメント」と同文)が載っています。
地球生命の、明日はどっちだ!?
中生代の地球で、恐竜は巨大化の道を選び地球上を制覇したかに見えた。
一方、哺乳類は一日食物をとらないと生死にかかわるという高代謝を選択し、餌獲得のために知能を発達させ、次の主役となった。
しかしカメは第三の道である低代謝を選択し、餌がなければ1ヶ月でも待つことができる体を獲得した。
その結果、ガラパゴスゾウガメは200歳を超える寿命の固体も確認されている。
あわただしく攻撃的に生きる40年(自然状態でのサルの寿命)とゆっくり打たれ強く生きる200年のどちらに価値があるかはだれにも決められない。
地球生命を相対化する視点から語る、意欲的なカメの進化学入門。
「~の、明日はどっちだ!?」は、アニメ『あしたのジョー』の予告編を意識してるんですよね? 「固体」は「個体」の校正ミスかな?
勉強になったのは、次のようなこと。
- 最古のカメは、中生代の三畳紀中頃(約2億3千万年前)の地層で、2005年に甲羅の一部が発見されたプリスコケリス。
- 三畳紀後期(約2億1千万年前)のプロガノケリスなどは、首は引っ込められなかったが、甲羅は後のカメと大差ないほど完成されていた。
- カメについては、羽毛が生えた恐竜の発見で、鳥類が恐竜の子孫だとわかったような中間型の化石がまだ見つからず、ミッシングリンクとなっている。
- 最近のDNA研究では、双弓類と呼ばれる爬虫類の中でも、ワニや恐竜など主竜類の近縁という結果が出ている。
- 超大陸パンゲアの分裂が始まったジュラ紀の中頃(約1億8千万年前)には、現在とほぼ同様の耳を備え、不完全ながら首を引っ込められるシンチャンケリス類が、孤立したアジア地域に現れた。
- 白亜紀(約1億4600万年前~6550万年前)には、首関節が柔軟で甲羅に引っ込められる現代型カメ類が出現し、大陸の分裂につれて多様化していった。
- 白亜紀末に恐竜を絶滅させた原因の影響は、カメ類についてはほとんど見られず、白亜紀末の17科のうち15科が新生代まで生き延びた。
- 哺乳類が爆発的に進化した新生代には、カメ類の科の分化も進み、分布が拡大し、甲羅の可動性を発達させたカメ類が進化した。
というように、2億年以上にわたって甲羅とともに存続してきたカメが、約200万年に石器を用いる人類が登場してからは・・・という話。
子どもの頃に飼ってたカメの名前は「みどり」でしたが、今後もし飼うことがあったら、カメ類が歩んできた長い道のりにちなんで、「あゆみ」にしようかなあ・・・と思いました。
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