『七里湖』
今年5月に亡くなった大庭みな子の『ふなくい虫』(1970年)、『浦島草』(1977年)、『王女の涙』(1988年)は、それぞれ単独でも読める3連作。4作めの「七里湖」(『群像』1995年1~12月、96年7~9月)は、1996年7月の脳梗塞で中断したまま未完だし、掲載誌を借りにいくのも・・・と思ってたら、本が出ました。
『浦島草』の後日譚として、『王女の涙』が支流なら、『七里湖』は本流という感じ。その流れは、第Ⅰ部の169頁分と第Ⅱ部の43頁分で途絶えてますが、不慮の中断がなかったら、最後には幻の「七里湖」に流れ込み、これまでの物語と混じり合ったんだろうなあ・・・と思いました。
「千葉市の南の丘陵地帯にその昔七里湖という沼があったという伝説」があり、「七里とはその深さか周辺の長さか、そこに着くまでの距離か、伝説でも曖昧なその幻の湖」。『浦島草』以来の登場人物・泠子が、「人の心の中にある計れない湖」になぞらえたその湖を覗くのは、死を迎えるときなのかも。
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