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2006年6月17日 (土)

『苦海浄土』の「くに」

月曜から、悪寒・発熱→喉の痛み→乾いた咳・鼻づまり→湿った咳・くしゃみ・鼻水と、滞りなく進捗している「風邪」の症状。

火曜はもともと休みでしたが、水・木・金曜は人前で話す仕事が1.5~3時間あったのに、ひどい鼻声に時おり混じる咳・くしゃみ・・・。

060617_1303001当ブログも中4日お休みしてしまいましたが、この間、強風のために満開を少し過ぎたバラ と昨秋から咲き続けていたビオラが、チリチリよれよれに・・・。

なので、午前中は、洗濯機を回しながら、傷んだ部分の剪定とベランダの掃除。少し前に熟し始めたレッドカラントは無事だったので、水遣りついでに味見しました(酸味があって美味)。

もうひとつ、この間、お風呂やベッドで少しずつ読んでいた『苦海浄土』3部作に関連した話を。

今回は、講談社文庫(『苦海浄土-わが水俣病』、『天の魚-続・苦海浄土』)ではなく、2004年から刊行中の『石牟礼道子全集』で、第1部「苦海浄土」、書き下ろしの第2部「神々の村」、大幅改稿された第3部「天の魚」を断続的に通読してます。

石牟礼道子を読むのは、日本近代を問い直す社会性や文学性、言語の質について考えたいから・・・というより、「なつかしい」感覚がするから。

不知火海沿岸の漁民の海や陸の上での暮らし、多用されている水俣弁も含めて、実体験のない世界なのに。

やはり前に読んだ鶴見和子『〈対話まんだら〉言葉果つるところ 石牟礼道子の巻』(2002年)に、「国」についてのこんな部分がありました。

 ←この本

石牟礼 もう亡くなられましたけれども、第一次訴訟に女の方がおられましたんですが、(略)
 「うーん、東京まで国ば探しに行ったったいな」
っていわれるんですね。
 「国ば探しに行ったばってんな、なかったよ。国は見つからんかった」
 「東京はどこに行きなさいましたか」
 「東京タワーにも登ってみた。宮城の前にも行ってみたがなあ、国はなかったばい」
と。「ああ、やっぱり」っていいましたけれども。(略)その人がイメージしていた国、あるいはイメージできなかった国というのは、どういう国だろうと、私ずっと考えてて、いまも。

鶴見  国というのはやっぱり自分を救ってくれるものだと思ってたんじゃないの? それが見えなかった。

石牟礼 ですから天皇陛下万歳といったりするんですよ、他の患者さんですけれど、女の人で。どういう国だろうな、それは、と思うんです。そうしますと、やっぱり自分を育ててくれた精神の風土が元になってると思いますね。草があったり……。

鶴見 社稷(しゃしょく)よ。 ※「社」は土地の神、「稷」は五穀の神。

石牟礼 そうそう。それでいまの時期になると桜が咲いてね、ウグイスが鳴いて、そういう四季の移り変わり。そういう自然と一体化している自分の風土、それがもっと美しかろうと思っているのか、何か自分をもっと親密に包みこんで、すっぽり安心できるように包んでくれる、なんか親のような……。(略)

鶴見 それがアニミズムの根底にあるものだと思う。

石牟礼 はい。そしてその風土というのはふだんあんまり意識されてない風土なんですね。彼女やその他おおぜいのおばあちゃんたちとかにとっては。風土なんて言葉も使わないし。(略)「くに」というとき、「国家」の「国」じゃなくて、人間が生まれて、最初に親和感をもった、生まれ里のような意味の「くに」なんですね。(略)それを探しに行ったんじゃないかと思うんです。

その直後に見た「たけしのTVタックル」で、拉致被害者のお父さんが、政府や国民の反応がなかった頃のことを「はっきり言って、日本の国じゃなかったね」と発言されてましたが、その「国」も、「国家」だけではない気がしました。

上の引用部分では、まるで桃源郷のような「くに」ですが、『苦海浄土』3部作には、隣の家の経済状態や食事内容まで筒抜けの人間関係、補償金がらみの「奇病分限者」に対する嫉妬、「チッソ城下町」の市民からの中傷や差別も描かれています。

でも、生きながら我が身もろとも世界を喪失し、身も心も「出郷」せざるを得なかった人々が思い描く「くに」や「~ばい」という方言は、やっぱり「なつかしい」気が・・・。

父母が出郷して私自身は住んだことがない、幼少時に2度しか行ったことがない福岡県の田舎の記憶と、母方の亡祖母が私に言った「よからかまんちん」、仏壇に手を合わせるときの「まんまんしゃん、あっ」という言葉(しか憶えてない)。

もし父母が出郷せずに、そこで生まれ育っていたら、この人たちと似た言葉を使い、近代合理主義が切り捨ててきた「こと」や「もの」を、もっと体験的に「わかる」感覚を持っていたかなあ・・・と思ったり。

遠い記憶の中の祖母の言葉、今は、「よからかまんちん」はパセリに、「まんまんしゃん、あっ」は亡きミントに、ときどき使ってます。

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コメント

「あんたクニはどこね」「小倉(こくら)ばい」とヤマトや999作った先生のマンガに出てくる意味のクニですね。もっと深いか。日本中どこへいっても同じ景色だし我々が住んでる地域は最悪にうわべだけのイナカっぷりですので心象風景にある景色(場所)を映像化すべく鋭意制作中です。屋号「壱景」の由縁なので。

k島(笑)です、先日の水道橋「レトロ和民」ではどうもお疲れさまでした。
しばらく更新が無かったので少し心配になり、
「ヤダ、ちょっとだいじょうぶなのー?」と、mail入れようと思ってたら
風邪と共生?しつつ復活なさったようでちょっと安心。

ところで昨年おじゃましたときに拝見したベランダは
「空中庭園」ってかんじでウットリでした。
画像のレッドカラントに興味津々、味見してみたい・・・。

それにしても「よからかまんちん」っていったい・・・?

(私の親も福岡出身なんですよー。でも故郷に愛着なさそうだし、
尋ねても「知らんねー」とかいわれて会話が終わってしまいそう・・)

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